幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

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 真凛もそれに気がついたようで、俺の服の裾を引っ張って反対の方向へ誘導しようとしている。その仕草がまた可愛くて、俺はそのまま引きずられて行こうとしかけたが、頭に浮かんだある考えを振り払うことはできなかった。 「真凛、あれやりたい」俺はキックターゲットを指で差した。  真凛は予想通り苦笑いを浮かべたが、これまで散々真凛のやりたいことをして欲しいものを買ってやったのに、初めて俺が示した要望を拒否できなかったのだろう。素直に頷いた。  受付へ行って金を払っていると、俺と真凛の姿に気がついたようで、君嶋は俺を睨みつけてきた。ははは! 睨むなんて芸がないな。平気な顔をしてみろよ。……俺も睨んでいるが。  9枚のパネルがあり、12回ボールを蹴ることができる。  俺はサッカーなぞ体育の時以外やったことはない。部活もクラブもしていないが、それでも運動神経は悪くないと思う。  ほら。もう2枚も落としたぞ。よし、3枚目!  結局俺は5枚のパネルを落とすことができた。真凛の顔を見る。驚いているが、目は電飾の瞳になっていて、電灯や照明の光を反射させてキラキラとしている。なんて可愛いんだ。やってよかった。  君嶋は……。ははは! あいつも驚いてやがる。何? あいつは4枚? あはは! そうかそうか。我が校のエースストライカーくんは4枚か。そして素人の俺が5枚と。それは愉快だなぁ。真凛の肩に置いた俺の手を、我が物顔で振り払いやがった仕返しだ。幼馴染なんて、ただ偶然近くの家に生まれただけだろ? 運命の相手でもなんでもない。真凛の彼氏は俺で、お前はただの幼馴染だ。告ってオーケーをもらったのだって、相手が拒否できない状況でのことだ。真凛に本心を聞いたのか? 真凛よ、言ってやれ。お前はただの幼馴染で、大輝くんが彼氏だとな!
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