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「いやあ、すごいね。だが残念ながら、わたしの出番はなかったようだ」 「て、店長さん!」  しまった、店長さんに手を出させないことを優先し過ぎて、この馬鹿力と執念深さを見せたらどう思われるかということを忘れていた。ああ、私の馬鹿馬鹿。せっかく、いい雰囲気だったのに! ええい、かくなる上は! 「私、あなたの秘密を知っているんです。バラされたくなければ、今夜一晩で構いません。私と一緒に寝てくれませんか?」 「騎士さまが一般人を脅すなんて、悪い子だね」 「だって店長さん、あなたは一般人なんかじゃないでしょう? 私、知ってるんですから」  私の言葉に店長さんは、驚いたように目を見開いていた。 「ミーちゃんは、わたしの秘密を知っていてそんなことをお願いしているの?」 「はい。誰にも言いません。でもどうしても私、店長さんと一緒に寝たいんです! もう我慢できない。限界なんですっ」  あの元凶たる元カレに一発決めたおかげか、私は満ち足りていた。ストレスの原因に直接仕返しができたおかげで、不眠症そのものが一気に改善したらしい。そんな即効性があるのかは正直疑問だけれど、眠たくてくらくらしてきたのだから、しょうがない。  あまりの眠たさに、涙で目が潤む。眠い。今ならこの道端でも意識が飛びそうだけれど、せっかくなら安心毛布なわんこと一緒に朝までぐっすりコースがいいよおおお。せっかくの眠気を手放したくないっ。 「店長さん、お願いっ」  はあはあと息を荒げながら、身体を預ける。店長さんが私を抱きしめてくれるのと、心地よい眠気に身をゆだねて私が意識を手放すのとは、ほぼ同時だった。
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