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 わふん。  あわあわする私の元に金色の毛玉が飛来した。おお、これは! 「私の安心毛布ちゃん!」  腕の中にもふんとおさまっていたのは、あの日見つけたお日さまみたいなわんこだった。やっぱり、夢や幻じゃなかったんだ! 嬉しさのあまり大型犬の身体に顔をうずめてすはすはしていると、呆れたような店長さんの声が落ちてきた。 「なるほど。ミーちゃんはわたしではなく、相棒狙いで店に通ってきていたんだね」 「この子、店長さんの相棒なんですか? ペットではなく?」 「この子はこう見えて聖獣なんだよ。本来の力を解放すれば、国だって焦土にできる。家での留守番は退屈みたいだし、聖獣に勝てるような人間はいないから自由に出入りさせているんだ。ちなみにあの酒場は、王の犬の情報交換場所だよ」  隠れ家的酒場というか、本来なら見つからないはずの酒場だったらしい。じゃああの気さくな常連さんたちもみんな魔術師なの? 嘘でしょう? 「それにしても、妬けてしまうな。わたしは君に出会ってから、君のことで頭がいっぱいだったというのに。君はわたしのことなんて、眼中になかったのか。確かにこの子は可愛いけれどねえ」  店長さん、この手は何ですかね? なぜ、わんこもとい聖獣さんを横にどかしてから、私に覆いかぶさってきたのでしょうか? こんな美形で貴重な魔術師さまが、平凡な私に手を出すなんてことは、ない、よね? 「あの、店長さん。手を離していただければありがたいんですが?」 「わたしと一緒に寝たいと言ったのは、ミーちゃん、君だよ」 「いや、それは一緒に寝てもらえたら朝までぐっすり眠れるだろうなあと思っただけで」  そもそも、ひと違いならぬ犬違いでしたし。 「大丈夫、ちょっと運動して身体があたたまったら、またぐっすり眠れるから」 「店長さんが、変態っぽい発言をしている!」 「むしろ、昨晩わたしをひたすら生殺しにしていたミーちゃんの方がとんでもないと思うけれどね。すやすや気持ちよさそうに眠る君を見て、わたしがどれだけお腹が空いたか、わかるかい?」 「いやいや、聖獣さまにこういうやりとりを見せるのは教育上よろしくないのでは」 「心配は無用だ。彼は、よく理解している。ほら、邪魔をしないように向こうの次元に行っておいてくれるそうだよ」 「ひえっ、向こうの次元とか何? ってか聖獣さま賢すぎる!」 「まあ、とりあえずあと一回だけわたしと朝まで過ごしてくれたら、きっとわたしから離れたくなくなるよ。なんといっても、わたしは尽くす男だからね」 「ぎゃああああ。桃色なサービスは求めてません!」  そういう訳で不眠症は無事に解消したのだけれど、それ以来腰が痛い毎日を送っています。
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