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【Epilogue】
『佳純、明後日だけどさあ』
「あ、どうなった?」
大学の友人からの電話。
普段の連絡はほぼメッセージアプリだが、声を聞いて話したほうがいいこともあるので電話も大切な手段だ。
『いや、ギリギリまでごめん! やっと新しいバイトの子来たから。明後日はちゃんと空けられたわ。先週から休みなしだもん、いくら夏休みだからって勘弁してよって感じ』
「そっか、よかったね。いま割とどこも人手不足だから、簡単に辞めて変わる子多いらしいけど」
苦労話は聞かされていたので、口先だけではない慰めの言葉が出た。
『辞めるにしてもいきなりシフト無視して、店長が連絡したら『あ、辞めますー』って、他のバイトのことも考えてほしいよね〜』
「それはほんとにそう思う!」
仲の良い友人グループでの遊びの約束を確認し、スマートフォンの通話をオフにする。
ふと顔を上げると、自室の窓の向こうにはすっかり夜の帳が下りた東の空が広がっていた。
ひときわ輝くあの星がベガ。そしてその斜め下……。
二人で空を見上げて夏の大三角を教わったあの日、帰宅してから調べて知った。
アルタイルが牽牛、……つまり彦星だということを。
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