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七夕はもう一か月も前に過ぎた。
離れていて会えなくとも、博己は彦星とは違う。
いや、たとえ彦星だとしても、彼の織姫は佳純ではなかった。
ただそれだけのことだ。
白馬になんて乗っていなくてもいいから、佳純の『たった一人』をこちらから探しに行かないと。
そう、今電話を掛けて来た友人に紹介を頼んでもいい。交友関係が広い上に責任感も強い彼女なら、安心して話を持ち掛けられる。
女友達との関わりもとても楽しく大切だ。しかし、……それだけでは何かが足りない気持ちも日々強くなっていた。
かけがえのないパートナー。愛と信頼を預けられる人。
願わくば、一緒に星空を眺めて笑みを交わせる相手。
佳純だけの彦星になり得る誰かを。
──今のあたしはもう、博己の織姫になりたいんじゃない。ただ、お兄ちゃんとかおりさんみたいに「愛し合える人」とめぐり逢いたい。
博己は永遠に「兄」であり、それ以上でも以下でもない。
本心からそう思える佳純は、かつて思い描いたように義兄と並び立つ「山」である己を素直に受け止められるようになったのかもしれない。
山を乗り越えたその先に、きっと佳純が掴みたいと願う『星』が待っている。
~END~
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