第2章 カルマの後悔~1週間で路銀が尽きた。

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第2話 旅するだけでお金がなくなるじゃない! 「旅ってお金がかかるのね。トホホホ……」  路銀を入れた財布。その心細くなった中身を数えながら、カルマはため息をついた。 「まあ、いいわ! とにかくヒメイジまであと少しのところまで来たんだから」  宿代、食事代を浮かせるためにカルマは二本の足で歩き、野宿で夜を越すことにした。食事もできるだけ自給自足で、野草を摘み、獣を狩った。  攻撃魔術が使えないカルマだったが、付与魔術が野外生活に役立つということを知った。  拾った棒きれや石ころに付与を行えば、切れ味鋭い剣となり、大ハンマーや大砲の代わりになった。  飢えることなく、カルマは迷宮都市ヒメイジに到着した。  ダンジョン用の装備を買い整える金はない。カルマは自分の手で武器と防具を用意することにした。  道端で拾った太めの棒きれに耐久性向上と切れ味向上の強化を繰り返し施す。たいてい一回か二回の付与で棒きれは粉々になった。  それでもかまわない。元手はタダだ。  一日中それを繰り返していたら、耐久性向上五回、切れ味向上五回を受けつける棒きれに出会えた。 「ぬははは。やってみるもんだな。お前を『聖剣ボウ』と名づけよう!」  試しに直径ニ十センチほどの立ち木に斬りつけてみると、すうっと抵抗なく切り倒せた。 「うん? えぇええー! この切れ味はヤバすぎるでしょ?」  廃業前はそれなりに良い剣を素材として魔術付与していた。だからこそ付与が失敗した時に騒ぎになったのだ。 「これなら最初から棒切れを山ほど拾ってきて強化すればよかったじゃん!」  もっとも名のある剣士が、道端に落ちていた棒切れを腰に差すわけにもいかないだろう。世の中とは面倒くさいものだ。 「じゃあ、盾も自分で作ろうか?」  カルマは聖剣ボウを腰に、町を出た。近くの森で木を切るためだ。  適当な大木(・・・・・)を聖剣ボウで切り倒し、板材に加工する。熱したナイフでバターを切るような手軽さで、百枚以上の板材が手に入った。  これを並べて、片っ端から強化魔術を付与していく。  今度は半日で耐久性向上五回がけに耐える板材を手に入れた。 「よし! お前を『聖盾イータ』と名づける!」  ほくほく顔で聖盾イータを持ち上げたカルマは、イータに持ち手がないことに気がついた。  余った木材から持ち手を切り出し、釘でイータに打ちつけようとしたが、イータが硬くて釘が通らない。 「うええ。面倒くさい」  カルマはじゃらじゃらと釘を地面にぶちまけて、耐久性向上の魔術を施した。二回、三回と重ねがけすると、耐えられなくなった釘が粉みじんになって消滅していく。  五回の重ねがけに耐えた釘が、最後に十本残った。  カルマは十本の釘で、持ち手を聖盾イータに打ちつけることができた。   「これでよし、と」    聖なる装備を携え、カルマは冒険者たちに混ざってダンジョンに潜った。
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