第3章 カルマの驚愕~刀に語りかけるって、そういうことじゃねぇよ!

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第3話 結局旅に出るんかい! 『なあに、そう悲観したもんでもない。わたしは鑑定が使えるからね』 「何だとおうっ?!」 『何しろ今のわたしは妖刀だからね。剣や刀の声を聞くことができるのさ』  何と、探し求めていた鑑定魔術は朝霧が持っていた。付与魔術の許容回数など、その武器を見ただけでわかるという。 『ふふふ。その代わり、わたしを所持していると十日で一年寿命が縮むよ』 「うおいっ! 楽しそうにいうなっ! 呪いを! 呪いを解く方法を教えてくれいっ!」  得なのか損なのか、よくわからない。カルマは感情の振れ幅に翻弄された。  もちろん損に決まっているのだが、カルマはイケメンのイメージに目がくらんでいた。 「待て、待て。そうだ! 妖刀に付与魔術を重ねがけしたら、いずれ砕け散るんじゃね?」 『残念。キミの魔術師としての格よりわたしの妖刀としての格の方が上なのでね。キミの魔術は効かないよ?』 「くそっ! 肝心の時に破壊属性が働かないとは! これもイケメンの種族補正という奴か?」  壊れてほしくない時には壊れ、壊したい時には壊れないとは。カルマはままにならない運命を呪った。  あと、「イケメン十九歳で実体化しろ!」と必死に祈っていた。    『呪いを解くには百人の悩みを断ち切らなければならない。――わたしが悩んで死んじゃったのが元なのでね』 「お前、イケメンの癖に拗らせ過ぎだろうっ!」 『百人の悩みを解決するのが先か、キミの寿命が尽きるのが先か。前の持ち主たちよりは長持ちしてほしいなあ』 「あの道具屋の店主、知っててこいつを押しつけやがったなあ! チキショー!」    その日から、人々の悩みを解決しながら旅をする、不思議な魔術師のうわさが世間に流れるようになった。 「ふぬぬぬ! 何が悲しくて人の悩みに首を突っ込まなきゃいけないのさ。イケメンは実体化しないし。飲まなきゃやってられねぇよ、こんな生活! あと、イケメンは実体化しないし!」 『カルマ、飲み過ぎると路銀がなくなるからほどほどにね』 「うー。飲ませてくれい! あと一杯! あと一杯だけ!」  カルマがやさぐれる日々は、始まったばかりであった。(了)
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