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ここはどこ?僕はなぜこんなところにいるの?
暖かくて気持ちがいい。目の前には綺麗なお花畑が広がっていた。誰もいない。いるのは雄太だけだ。
どこからか自分を呼ぶ声が聞こえる。
お父さんとお母さんとお姉ちゃんの声だ。しかし辺りを見渡すがどこにも人影はない。
「雄太」
しわがれた声がした。振り返るとおじいちゃんがいた。懐かしい。小さい頃よくおじいちゃんの家に泊まりに行って遊んでくれた。大好きなおじいちゃんだ。隣にはおばあちゃんもいる。最近会ってないけど元気そうだ。
「雄太こっちへおいで。そっちに行ったらダメだ」
おじいちゃんが手招きをする。隣にいるおばあちゃんも手招きしていた。
「雄太」
この声はお父さんだ。怖いお父さんの声を聞くだけで背筋が伸びる。おじいちゃん達とは別のところにいた。横にお母さんとお姉ちゃんもいる。
「雄太はこっちの子でしょ。おじいちゃん達に惑わされないでこっちに来なさい」
お母さんがしゃがんで両手を広げた。あれは駆け込めば抱っこしてもらえるポーズだ。お母さんの抱っこは柔らかくて気持ちいい。お父さんの抱っこもお姉ちゃんの抱っこも好きだけど、やっぱり一番好きなのはお母さんの抱っこだ。
気がつけばおじいちゃんとおばあちゃんのいるところまで、お花畑を割いて道ができている。
お父さんとお母さんとお姉ちゃんのところまでも道ができている。
「雄太」
「雄太」
「雄太」
「雄太」
「雄太」
みんなの声が僕を呼ぶ。
どちらの道にも看板が立っていて、青地に白抜きで矢印が書いてある。矢印の方向は向こう向きだ。僕の家の前の道と一緒で、この看板は一方通行だと以前お姉ちゃんが教えてくれた。
「雄太、こっちにこい!」
おじいちゃんが必死で叫ぶ。
「雄太、いい子だからこっちに来なさい」
お母さんが優しく呼ぶ。
どちらにするか迷ったが、やっぱり僕はお母さんの抱っこが一番好きだ。そのままお母さんの胸に飛び込んだ。おじいちゃんとおばあちゃんの悔しがる声がする。それでもいいんだ。僕は大好きなお母さんに抱っこをしてもらっている。
「よくやった、雄太」
お父さんに褒められた。
「これでまた家族みんな一緒ね」
お姉ちゃんが笑みをこぼした。
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