いにしえの山頂噴火

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 向こう側から巨大な人影が走ってくる。  彼が大地を踏むたびに轟音(ごうおん)と共に大地が揺れる。  それもそのはず、彼はあまりにも巨大だからだ。  身長が極めて高く、雲の中に上半身が入ってしまうほどである。また、それだけではなく、体重も相応に重い。 「まずい! まずい!」  そんな彼の表情は、どこか苦しそうだ。顔色もあまりよくない。 「漏れる! 漏れる!」  腹を手で押さえながら、前かがみになって走っている。もしかしたら、腹の中が緊急事態なのかもしれない。  彼が人間の住む集落に近づくと、辺りが真っ暗になった。彼の影に覆われたのだ。  集落の人々はどう思ったのだろうか。  いきなり夜が来たと思った人もいれば、日食かと思った人もいるかもしれない。あるいは、この世の終わりだと思った人もいるかもしれない。  いずれにしろ、多くの人が不安を抱いたに違いない。  晴れていたのに、一気に真っ暗になったのだから。  どんなことが起こるのか、想像はつかなくても、悪い予感そのものは的中した。  彼が集落に踏み入ったことにより、多くの人々や建物が彼に踏み潰されたのだ。悲鳴を上げる間もなく。  そんなわけで、彼の足裏には、多数のぺしゃんこになった人々や建物が付着しているのだが、彼は全くと言っていいほど気にしていなかった。
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