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「あったぞ! ちょうどいいのが!」
つい先ほどまで苦しそうだった彼の表情に光明が差す。
彼の視線の先には山があり、その頂上には火口がある。
「とうっ!!」
彼は空高く跳躍し、唯一身に着けている衣類である腰蓑をはぎとるようにして脱ぎ、着地と同時に山頂に腰かける。
衝撃により、地震が発生する。その大きさは今までで最大のものだ。
彼は地響きが終わらないうちに用を足し始め、糞尿と屁を火口の中にぶちまける。
ぶっ! ぶりっ! ぶちっ! ぶじゅじゅじゅじゅ……っ! ぴっ! ぶうぅ~っ! じょおおおぉ~っ!
「ああ、すっきりした」
排便と放屁と放尿が終わると、彼は立ち上がり、腰蓑を身に着ける。どうやら、彼には排便後に尻を拭ったり洗ったりする習慣がないようだ。
快感に身を包まれているのか、彼はにこやかな表情になっている。ついでに顔色もよくなっている。
「――?」
何者かの声が聞こえたような気がした。
『ん! んあああああぁーっ!!!』
何者かが雄叫びを上げている。
同時に地面が揺れ始めた。今度の地震は、彼によるものではない。
山の火口から、もくもくと煙が昇り始める。
『よくも俺の中に糞と小便と屁をぶちまけてくれたなあぁーっ!!!』
山が爆発的噴火を起こした。無数の火山灰や岩石が飛び散り、噴煙が天高く昇っていく。
どうやら、先程の雄叫びは、山のものだったらしい。
火口に汚物をぶちまけた彼に激怒したのだ。
「まずい! 逃げろ!」
彼はすたこらさっさと地震を起こしながら逃げていく。後ろからは、山から噴き出した火砕流が、追いかけてくる。
これ以降、彼は山の火口で排便しなくなった。
だからか、山は山頂噴火を起こさなくなった。
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