呪いの真実

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「西寺さん!目が覚めたのね!」 わたしの顔を覗き込む保健室の佐藤先生とお母さん。 「あぁ、良かった」 お母さんはホッとしたような表情を浮かべるが わたしはさっきの出来事のせいで うまく笑えなかった。 わたしのせいで、茉莉奈が死んでしまったから。 時を戻せるなら戻したい。 けれど、神の力が薄れてしまった今の私では どうすることもできない。 あるひとつの方法を除いては。 茉莉奈、わたしの因果に巻き込んでしまって ごめんなさい。 わたしが責任を持って、茉莉奈を生き返らせるから。 1週間後、わたしは佐久夜山を見上げていた。 これで、全てが元通りになる。 佐久夜山の空気は浄化され美しい山へ。 茉莉奈は蘇り、普段通りの生活を送れる。 山の時と茉莉奈の運命を変えることで それは可能になる。 わたしは美しい風景を見つめた。 さようなら。わたしが愛したこの自然たちよ。 涙が頰を伝い落ちる。 本当は一緒にいたかった。 ずっとここで暮らしていきたかった。 だけどもう決めたから。 ごめんね、茉莉奈。 身勝手なわたしを許して。 「お願いします、佐久夜山を浄化し、 茉莉奈が死ぬ運命を変えてください」 そう願い、わたしは自らの 心臓にナイフを突き刺した。 燃えるような痛みに転げ回りたくなる。 全身から力が抜けて、 私は大量の血を吐いて倒れた。 意識が、感覚が遠くなっていく。 けれど、邇邇芸に会えるかもしれないと思うと 怖くはなかった。 どうか、生まれ変わることがあれば また、茉莉奈と出会えますように。 そう願い、瞼の帳を下ろした。 (終わり)
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