呪いの真実

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呪いの真実

わたしはどこまでも真っ黒な世界に1人佇んでいた。 「木花佐久夜毘売様。 また、こうしてお会いできるとは光栄です」 振り向くと古めかしい着物を着た男が立っていた。 頰はこけ、顔は幽霊のように白い。 「あなたは……誰?」 「転生を繰り返し、記憶もないようですね。 わたしはあなたの恋人を殺した男ですよ。」 この人は、さっきから一体何を言っているのだろう? 「なぜ、わたしのことを木花佐久夜毘売と呼ぶの? わたしは恋人なんていないし、 あなたのことも知らない」 男はクククッと笑った。 そしてわたしの首を掴み勢いよく持ち上げる。 「ぐぁっ!!!!」 「ふざけるな。 俺は何回もお前の呪いに殺されているんだ! お前だけ幸せになるなど許さない!!!」 息が苦しい!! 藤原と名乗った男に手を伸ばすと、 彼はわたしの首を掴んでいた手を振り払った。 地面に振り落とされ、 意識が朦朧しながらもなんとか深く息を吸う。 そして先ほどの藤原の言葉を反芻すると 脳裏に包丁を握った男の姿が映し出された。 ……まさか。 激しく頭を振ると、 記憶が徐々に蘇ってきた。 『お慕い申し上げております、木花佐久夜毘売様』 柔和な顔立ちで陽だまりのように微笑むあの人。 愛しい邇邇芸命(ニニギノミコト) ごめんなさい。 ずっと思い出せなくてごめんなさい。 「……わたしが木花佐久夜毘売だったのね」
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