呪いの真実

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「ええ。その通り。 あなたは佐久夜山を呪いの山へと 変化させた木花佐久夜毘売です。 可哀想に。自分がかけた呪いのせいで 親友まで失うことになってしまうとは」 「……あなたがそれを言うの? あなたがこの美しい山で彼を殺したりなんかするから、山が穢れてしまった!! 毒と化した空気のせいで人間や生き物は 暮らせなくなってしまったのよ。 もう、誰も死なせたくない。 そう思ったから、わたしは山に呪いがかかっている という噂を村人たちに流したの! それなのに、なぜ、茉莉奈は!!」 涙が怒りと悲しみを表すように溢れ出る。 神の生まれ変わりであるわたしに 山の毒は効かなかったけれど 人間である茉莉奈には効いてしまった。 今考えてみると突然、茉莉奈が 山へ行こうと言ったのだっておかしい。 「なぜって、あなたの呪いのせいに 決まっているじゃないですか」 「黙りなさいっ!! わたしはもう誰にも死んでほしくなかった……。 本来なら茉莉奈は山へ行く理由がなかったわ。 好きな人だなんて聞いたこともなかった。 ……あなたが仕向けたのね?」 藤原を鋭く睨むと彼は冷たい 眼差しをわたしに向けた。 「だって仕方がないじゃないですか。 木花佐久夜毘売様のこの呪いは100年、200年、 300年経っても解けやしない。 俺は何回も呪いに殺され続けているんですよ。 もう、大切な人を殺されたくなければ この呪いを解いてください。 もう、こんな毎日嫌なんですよ」 その言葉にカッと頭に血が昇るのを感じた。  「わたしの大切な人を2度も殺すなんて、 決して許されることではないわ!! どうしてあのとき邇邇芸を殺したの!!」 「だって、つまらなかったんですもん」 その言葉にゾッとした。 この男には、何を言っても響かない。 わたしの愛する人達を殺していながらも。 「神がかけた呪いは何年経とうと解けません。 ……永遠に苦しんでいなさい。」 わたしの口からこんなに冷たい言葉が出るのかと 自分でも驚いた。 でもわたしの大切な人を2度も殺したのが どうしても許せなかった。 目の前の男がひたすらに憎い。 藤原は動揺しているかのように 瞳を揺らがせている。 「え? と、解けないってどういうことだよ」 「地獄に堕ちなさい」 涙を流しながら言葉を放つと、 黒い世界に光が差し込んできた。
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