少女よ

1/1
前へ
/1ページ
次へ

少女よ

少女よ きっとあなたは これまでも そうしてきただろう 自分の体と心に ゆるぎなく正直だっただろう 少女よ きっとあなたは これまでも 許されてきただろう 何が良くて 何が悪いか その判断が曖昧なのだ 半分開いた缶詰の蓋のように 曖昧なのだ そうして 好きな方へ 好きな方へ 真っ正直に 生きてきただろう 少女よ 私は問いたい これまであなたが どのように人生を 歩んでこられたのか 勿論 誰かを守ったこともあるだろう 勿論 頑張るの意味も知っているだろう それゆえに 私はあなたの全てを拒絶することは難しい 少女よ 私はあなたが恐ろしい 愛されなかったわけじゃない 褒められなかったわけじゃない ひどい暴力を日常的に受けたわけじゃない 外出させてもらえなかったわけじゃない でも 私とあなたの間には ことごとく深い深い溝があるようで 私はあなたが恐ろしい 少女よ 私は私が恐ろしい いつか私があなたのように 無責任に誰かを傷つけてしまうのではないか 思い通りにいかない人生に駄々をこねるのではないか 心の卑しさが表面化してしまうのではないか あなたの血が流れていると感じれば感じるほど 私は私が恐ろしい 少女よ 私は 幸せになりたい そのためには 内外問わず磨いていかなくてはならない あなたに教えられなかったこと あなたに似てしまったところ 大人になった今 自分の力で知って なおしていかなくてはならない そうして少しでも 魅力的になりたいのだよ 少女よ 私はあなたをこれ以上批判することもなければ 愛を求めることもないと思ってください あなたと私は そもそも分かり合える仲ではないようだ 人間なんて そんなものだ そんなものなのだから 仕方がないのだよ 少女よ どうかあなたは このまま 何も知らずに 平和に過ごしてください 少女よ さようなら。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加