落ちこぼれの巫女は祓い屋に嫁ぎたい

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 両親が亡くなったのは、怨念や呪いの類だと噂され、夕子になにかすると祟られるという噂も立ったことから、からかわれることはなくなった。しかし孤立を加速させただけである。  おかげで就職もままらない。こんな女を雇ってくれるところはないらしい。  そんな折、山野辺家に縁談の話が舞い込んだ。  伯父夫婦に呼ばれ、神妙な顔で告げられた内容は、山野辺の巫女筋の娘さんと縁組をしたいというもの。 「山野辺の娘ということは、美祢子(みねこ)ちゃんのことではないのですか?」 「美祢子はまだ十四だ。見合いの相手は高等学校を卒業したのち実家で商いをしている。そろそろ結婚相手を、ということで、うちに話がまわってきたようだな」  腕組みをして頷く伯父。  その隣の伯母は言わなくともわかる表情で夕子を見ていた。 (あーはいはい、大事な娘をよその土地に嫁にやるなんてできませんよねえ) 「それで伯父さん、お相手の方はどのようなお仕事をされているのですか?」  就職がままならないとなれば、残る道はどこかへ嫁ぐのみ。  同級生の多くはそうだった。胡散臭い夕子には縁がないと思い選択枝から外していたが、その道が目の前に現れたのだ。逃す手はない。情報収集をしなければ。  至極まっとうな質問だったと思うが、伯父はそこでややたじろぎ視線を落とす。  なんだろう。後ろ暗い、お天道さまに顔向けできないような、そういった職業だろうか。  すこし後悔しはじめた夕子に、伯父はなんとも珍妙なことを言ったのだ。 「(はら)()だ」  
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