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内緒の二人
会社から数駅離れたホテル街に、増岡恵子の夫、隼人の姿はあった。
「店長、今日お泊りできるでしょ?」
「もちろん。抜かりないよ」
「一週間すっごく長い。私は毎日でも会いたいのにぃ」
甘ったるい声で隼人に絡むのは同じ会社の部下、佐々木美緒だ。
ジュエリー卸会社が展開する小売店を任されている隼人は、売り場担当の美緒と不倫関係にあった。
「毎日会ってるだろ?」
「だって、仕事場だもん。いろいろできないもん」
「佐々木、お前バレるようなことすんなよ、職場内とかまずいからな」
「しない、絶対しないです。でもぉ、内緒って、すっごいドキドキしますよね、てーんちょっ」
一回りも年下の美緒に隼人は夢中になっていた。
美緒は一見清純そうだがそれなりに艶っぽいところがある。服装は派手過ぎず地味過ぎず、よく見るいわゆる量産型というタイプだ。
「佐々木、お前はホントかわいいな」
「やだ、店長……ねぇ、どんなところがかわいい?」
隼人はまるで子供でも扱うように美緒の頭をポンポンと手のひらで撫でた。
「イクときの顔」
「……やだぁ、エロい~。若いコからかったら駄目ですよっ」
24歳の美緒は36歳の隼人から見れば十分若いが、会社にいるときは「若くてかわいい社員」とまではいかない。19歳や20歳のコと比べたらそれなりだ。
美緒はきちんと相手を見て発言しているのだ。年上の男の扱いをよく心得ている。
「だからさ、もっと見せてよ、佐々木。ほら……」
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