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謙信という男
バイト先へ向かい自転車を走らせた恵子はコンビニへ寄った。いつもはお弁当を持っていくが今日は千尋がぐずってそれどころじゃなかった。売り場を眺めて、せっかくなら高たんぱくメニューにしようかとサラダチキンやヨーグルトを見た。
(高い……コンビニってこんなに高かったっけ。チキンとか家で作った方が良いなこれは)
塩おにぎり、豚しゃぶサラダ、カップ味噌汁を買いレジへ行くとスマートフォンでQRコードを出した。
隼人の前では疎いふりをしたが主婦の生活では必須の知識だった。
隼人の浮気を疑いつつも証拠が見つからないことでイライラが募る。千尋がぐずったのも自分のせいかもしれないと、少し反省した。
「支払いはpayで、袋とお箸もください」
「かしこまりました~タッチしてここにピッてしてくださ~い」
手早く商品を入れ、支払い方も指示してくれた。
コンビニには優秀な外国人と優秀な若者がいる。自分が同じ仕事をできるかと問われたら、間違いなく「NO」と答えるだろう。
「どうもありがとう」
「あざっしたー」
ニコッと笑ったピアスだらけの若い店員はとてもかわいい男の子だった。
気分が良くなり軽やかに出勤した恵子は開店準備をした。数分後に店長が出勤、そしてバラバラと数人のアルバイトが来て全員そろう。
「おはようございます。恵子姉、今日マネージャーが来るんだけど何か伝えることとかあったりします?次は来月らしいから、お客のこととか、商品のこととかあったらよろしくです。俺は通常の報告だけなんで」
恵子姉と呼ぶ男は20代後半の店長だ。アルバイトから社員になり謙信の後を引き継いでそのまま店長の座に就いた。まじめで良く働く肌のツルっとした好青年だ。
「うん、特にないや。最近は商品の流れもいいし、小物も結構動いてるしね。売れ線はいつも充実してるから……仕入、安定してるよね」
「そっすね、ケンシンさんがマネージャーになってからめちゃくちゃやりやすいですよ。滞りないっていうか、商品もだけどさ、本社とのやり取りもスムーズで助かっちゃって」
「へぇ、そうなんだ。元店長って仕事できるんだね。見かけによらず、だ」
「恵子姉ひどくね?あ、でもケンシンさん最近すごいんすよ。なんかガタイ良くなって。かっこいいっすよ」
「ふうん……」
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