『不幸せのお裾分け』

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『この、托卵女!』 当時の過ちは一度きりで、てっきり春樹の子供だと思って疑うこともなかったと弁解してみたが、夫の怒りはおさまらない。 もしこれが、本当に計画立ててやったことだと知れたら殴られるだろう。 だから、黙っていた。 妊娠が分かった時、逆算して計算をしてみたが、明らかに他の男の子だ。だからといって、経済力のある春希からのプロポーズを断る勇気もない。 それなら言わなければいいだけじゃないのか? 春希は子煩悩だし、私のお腹から生まれてくるのだから自分の子と同じようなもの。もしかしたら子供ができない体質かもしれない、などと自分の都合がいいように考え、この三年間はうまくいっていたのに…。 「そもそも、どうして不倫なんかしたのよ?」 「それは…」 ふと考えてみたが、どうしてか自分でも分からない。 ただ、仕事ばかりの夫と、手のかかる子育てに追われて『自分をもっと愛でてあげたかった』というのが近いか? 妻を顧みない春樹とのセックスは目に見えて減り、子を産んだのだから強制的に母親となる。子どもを愛するのは当然だと圧がかかるが、泣き喚く律子に苛立ちが募っていく。 本当なら、もっと私は輝くべきだ。 これだけ綺麗なのだから、もっと煽(おだ)てあげられるべきなのに…。
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