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「じゃ、今日はビールの出番かな?」
いつも発泡酒しか飲まない陽介が、そんな軽口を叩く。
「そうね、乾杯しましょ!」
道子がわざわざグラスにビールを注いでいく。
私の意思など、そこには存在しない幸せな家庭。
子どもを宿した妹はきっと、良い母親になるのだろう。
これまでのように生活を切り詰め、愛ある子育てをし、陽介はイクメンとして協力を惜しまない。赤子が元気に泣いていて、両親が寄り添っている絵が容易に想像ができる。
こんなにも私が不幸なのに?
同じ母親から生まれた姉妹なのに、こんなに人生に差があってもいいの?
托卵がバレて離婚をし、女手一つで娘を育てていかないといけない私と、托卵などとは無縁で理想の家庭を作り上げていく妹。
姉妹なんだから、平等じゃないといけないんじゃ?
私は別に心から幸せにならなくてもいい。
道子にこれ見よがしに幸せをお裾分けされるなんて、真っ平ごめんだ。
温くて緩いハッピーなど、反吐が出る。
それならいっそ、底辺を這いつくばっている不幸という名のステージまで、道子を引き摺り下ろしてやりたい。
そうすれば、フェアじゃない?
お互いたった一人の姉妹なんだから、嬉しいことだけじゃなく悲しいことも分け与えないと。
だからミッちゃん…。
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