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ちなみに婚約後、お父さまとアンドリューは大変仲良くなった。そう、仲良くなったのはとても嬉しい。とても嬉しいのだが……。
「なるほど、そんな噂が王都に」
「そうなのです。武力で叩きのめしても良いのですが、おしゃべり雀はあちこちにおりますから。ここはぜひ、このような形で」
「ああ、これは面白いな。せっかくならば、こちらからここを叩くのは?」
「やはり! 閣下ならそうおっしゃっていただけると思っておりました。では、こちらの書類をご覧ください」
どうしよう、ふたりが国家転覆を企てているようにしか見えない。爽やか系美男子だったはずの婚約者が、腹黒そうな笑みを浮かべている。これ絶対、お父さまから伝染したでしょ! お母さまに助けを求めようとしたところ、にこにことふたりを眺めていた。
「懐かしいわあ。昔、『王冠が欲しいとねだってくれればその望みを叶えてやるのに』と言われたことがあるのよ」
不敬! 不敬だから! っていうか、やっぱり全然気のせいとか、考えすぎじゃなかったし! あの会話、やっぱりそういうことじゃん。
「大丈夫よ、あなたがそれを望まなければ変に押し付けてくることはないから。面倒くさい相手がちょいちょい間引かれてはいるかもしれないけれど。まあ、害はないから」
「それって、害はないって言えるのですか!」
「たぶん? っていうか、害虫がのさばってても邪魔なだけだし、いいんじゃない?」
武力ならピカイチのお父さまに、策略なら任せろの婚約者。でも、私の望む生活は、穏やかで平凡なごくごく普通の生活なの。みんな、わかってる?
「ほら、備えあれば嬉しいなって言うでしょ?」
「それを言うなら、備えあれば憂いなしです!」
ひとまず、あの謎の陰謀を止めるべく、書類の山を片付けるところから始めようか。どんなに面倒くさい仕事でも、その先に愛するひとの笑顔があれば頑張れるものなのだから。
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