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年に一度の帰省。
いつも迎えに来てくれる母さんを熱すぎる太陽の下で待っていると、今回は母さんの隣に多忙な父の姿があり驚いた。
唖然としつつ二人の後を追いかけて車に乗り込むと、母が言う。
「からあげ、今年も沢山作っちゃった」
「まじで?! よっしゃっ!」
母の作る鶏のからあげは俺の大好物なので、興奮しテンションが上がる。
あー、早く家につかないかなぁ~。そわそわわくわくした気持ちを落ち着かせるように、俺は窓の外の流れていく風景をじっと見つめた。
程なくして1年ぶりの我が家に到着した。
母が開けてくれた玄関に、父が入っていく。父が靴を脱ぐのを外で待っていた俺だが、あまりに外が熱いので顔だけ玄関内へ突っ込む。
ふと目についたのは、シューズボックスの上に置かれた精霊馬。キュウリの馬とナスの牛がお盆の上にバランス悪く立っている。
「父さん、毎年作ってるわりにはいつも不格好だよな。まぁ年々腕は上げてると思うけどさぁ」
そう言うと、父さんは恥ずかしそうに後ろ頭を掻きながらリビングの方へと歩いて行く。
俺はそんな父を微笑ましく思いながら玄関へと入る。そして大きな声で言うのだ。
「ただいま!」
帰宅の挨拶をしてリビングに入ると、母さんと父さんはお盆飾りの施された祭壇の前に正座して手を合わせていた。
「おかえりなさい、裕介」
「今日から3日間、家でゆっくりしてくれよ」
祭壇に供えられている鶏のからあげ。
いやいや、お供えって肉や魚は駄目なんじゃないのか? ……でもまぁいいか。母さんと父さんがそれだけ俺のことを思ってくれてる証拠だしな。
さて、1年ぶりの帰省だ。両親の傍でゆっくりと過ごそうか。
《終》
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