44.もう一回と強請られた

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44.もう一回と強請られた

 旦那様を見送り、お父様を呼んでお勉強の時間を設けた。昨日はお祭りに行ったけれど、楽しいことをした後はちゃんと義務も果たさないとね。 「おまちゅぃ」  もう一回行きたい。指を咥えて、ことんと首を傾げる。お強請りの作法としては正しいわ。だって、いいわよと言いたいもの。即答したいのをグッと堪えて、笑顔で返した。 「そうね。今日もお祭りやっているわ。行きたいの?」 「うん」  呼ばれてやって来た双子が、やり取りに気づいてスカートを握る。抱っこしたレオンにこっそりエールを送った。エルヴィンは困ったように笑うが、行きたいのよね。 「そうね。これからお勉強を終えて、お昼寝までの時間なら……」  ちらっと視線を向けると、考え込んだフランクが頷く。護衛の手配は間に合いそう。 「お祭りでお昼ご飯を食べましょう」  あくまでも、お昼を食べるために行く。目的を示し、子供達の反応を窺った。きらきらと目を輝かせ、大きく頷いている。レオンも満面の笑みだった。  甘いのはわかってるわ、お父様。ベルントやフランクも、そんな顔をしないで。大変なのはこれからなのよ。出かける前から疲れるが、そこは若さで吹き飛ばす! 「さあ、お勉強よ」  エルヴィンと双子はお父様の指導を受けながら、机に向かった。勉強部屋で、今日のレオンは工作を始める。  粘土がないかと探したら、あったのよ! 屋台で売られていた粘土は、赤い土を使ったみたい。捏ねて形を作って乾かすと説明されたので、焼き物の土かもしれないわ。  用途は違っても、練って遊ぶだけなら関係ない。使い方だけ説明し、好きにさせた。捏ねると体温で柔らかくなることだけ伝え、レオンが作るものを待つ。ここで大人が何かを作ったら、レオンは真似しちゃうもの。 「うー」  唸りながら粘土を割って、小さなボールを作り始めた。いくつも並べるが、そのたびに私を見る。またボールを作り、それを半円形に並べた。 「何を作ったの?」 「……あげゆ……これ」  指さしたのは私? 違うわね。今日の装いを確認した。もしかして、半貴石の水晶で作ったネックレスかしら。ああ、この世界では首飾りというのよね。 「首飾り?」  にこっと笑ったので、正解みたい。たくさんの小さな粒は水晶で、半月に並べたのはレオンから見える形を再現したのね。 「すごく素敵だわ。これをつけていきたいくらいよ」  満足したのか、レオンはあっさりと作品を潰してしまった。保管しようと思ったのに……ショックよ。ぺたんと手のひらで潰し、一箇所に集めた。 「おわり」  おしまいの合図を上手に自分で口にする。ふふっ、お祭りがよほど楽しみなのね。ユリアーナはちらちらと私達の様子を窺い、ユリアンも同じ文字ばかり練習している。身が入ってない勉強は終わりにしましょうか。 「お勉強はおしまい、出かける準備をしましょうね」  わっと声が上がり、普段は勉強熱心なエルヴィンも即座に本を閉じた。おやおやとぼやくお父様と目を合わせ、くすくす笑って子供達を連れ出す。  レオンを抱っこして、すぐさま着替えをさせた。家族はそのまま出かけられるようで、確信犯かしらと苦笑いする。旦那様への伝言は不要と判断し、それぞれ馬車へ乗り込んだ。
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