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「夜、電話する」
そう言って宇佐美さんが帰ったあと、兼房がニヤニヤと私を見て腕を組み、リビングへと逆戻り…でも母が
「弥生、着替えて来た方がいいわ。ニオイがしてるから」
とカップを片付けながら言う。
「うん…こういうニオイってすごいね…着替えてこよ…」
部屋に向かって歩きながら、利き手の右手でカーディガンのボタンを外す。右手の火傷でなくて良かった。ただやっぱり3本まとめて包帯を巻かれた左手が使いづらいのは事実…指先だけの火傷だけど、絆創膏ではしっかり患部の保護が出来ないって大きく巻かれた。
「弥生ちゃーん。手伝うことある?」
「着替えは問題ないけど…」
と部屋を出ると、待っていた兼房が私の脱いだ服を持ってくれる。
「シャンプーが片手だな…って思ってた」
「そうだよね。体は泡風呂にして流すだけでも…真冬だから毎日ゴシゴシ出来なくても、シャンプーか…洗面台でシャワー出来るよ。洗ってあげようか?」
「お願いしようかな。髪も臭うと思わない?」
「思う」
私は洗面台に頭を出して、兼房にシャンプーしてもらった…
「どう?」
「うん…助かった…けど…」
と私は髪を拭きながら床に座り込む。
「今度があるなら…もう少しテキトーでいいよ。丁寧過ぎて、頭を下げてるのが疲れた…ふらふら…」
「ごめん…ごめん」
兼房も私の隣に座ると、捲り上げていたセーターの袖を下ろしながら
「弥生ちゃん、宇佐美さんのこと好き?」
と聞いてくる。さらに…
「クリスマスまでもうすぐだよ?」
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