山を登る

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 山を登る。  と言っても、二時間ほどで頂上につく初心者コースの登山だ。近所に住む人たちは散歩コースにもするらしい、そんなホテイさんと呼ばれる山。山の形が七福神の布袋さんが寝そべっているように見えるからそう呼ばれるらしい。 「こんにちは」 「こんにちは」  すれ違う登山者に挨拶をすると、上の様子を教えてくれた。 「今日は綺麗に晴れていますから、海まで眺められますよ」 「ありがとうございます」  テンポ良く登り続ける。歩く度にリュックについている鈴が鳴る。  鈴が付いているのはアルミのコップだ。あいつの使っていたもの。 「良くなったら登ろうと言っていたのにな」  その鈴の音が「悪いな……」と言っているように聞こえた。
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