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同僚たちは歩きながら話が盛り上がっていく。
「あんまり感情を出さないし、かっこよくない? 美人だし、まさにクールビューティー」
「分かる! 憧れてる人結構多いよねえ。こういう飲みは誘っても来なさそうだから声もかけられないけどさ」
「うちらとは違う世界の人間なんだよ」
笑いながらそう話す人たちから少し離れた後ろで、ゆりがじっと見ていた。さきほどまでの愛想のよさはどこへ行ったのか、面白くなさそうに目を据わらせている。
(クールビューティ? 全然美人じゃないじゃん、若くもないし。確かに仕事は早いから役に立つけど、それしかいいところないくせに。周りはやけに褒めてバカみたい。クールじゃなくて根暗なだけでしょ)
不満げに口をへの字にしていたが、すぐにゆりは一人で笑う。
(まあ、今日も手伝ってくれたし? クールビューティーとか言って、周りから浮いてるあの人と、こうやって可愛がられてる私じゃ全然立場が違うしねー)
そう思い、カバンからスマホを取り出す。何かを操作し、ゆりがほくそ笑む。
あんな人、全然私の敵じゃないからね。
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