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友達作りが下手な美緒は、恋愛もそう経験が多くない。でも、いつも明るく引っ張ってくれる滝沢に感謝していたし、唯一の心のよりどころだと思っている。
会社ではクールだと言われているが、彼だけは自分を理解していてくれるので、こうして会社を出た後に会うのが喜びの時間だった。
お互い年齢も年齢。結婚もそろそろかもしれない、と心で期待しているのは内緒だ。
「お疲れ。残業?」
「うん、上司に頼まれちゃって」
「そう」
滝沢はそう言ったまま、先に注文したであろうコーヒーを飲む。その様子に、どこか違和感を覚えて首を傾げる。
「ごめんね、遅れたこと怒ってる?」
「別に。美緒は仕事が大事だし」
「……別にそんなんじゃ」
やはり遅れたことを怒っているのか。美緒は遅刻常習犯と言うわけでもなく、今回はたまたま待たせてしまっただけなのだが……。
美緒は何とかフォローしようと笑顔で話しかける。
「今日は私のおごり。ご飯はまだ注文してないよね?」
「うん」
「何頼もうかな。このお店久しぶりだね。あ、ここのクリームコロッケ美味しいからーー」
「あのさ」
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