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時刻は午後二時。人々が忙しく働くオフィス内。電話の着信音、コピー機の稼働音、キーボードを打ち込む音。皆それぞれ自分の仕事に集中している。
そんな中、一人の男性が女性に声を掛けた。
「江本さん! 頼んでおいた資料、めっちゃ見やすいしよくできてるよ。ほんとありがとう!」
声を掛けられたのは、目がぱっちりして愛らしい顔立ち、ゆるく巻かれたロングヘアの江本ゆりだった。年齢は二十五。明るく華やかな笑顔で彼女は立ち上がり、嬉しそうに言う。
「ほんとですか? 嬉しいです! 頑張ったんです」
「ここのグラフさ、俺頼もうと思って言い忘れてたんだけど、よく気づいてくれたね」
「いえ、こうした方が見やすいかなあ、って……」
褒められて恥ずかしそうに俯くゆりを、男性社員はわかりやすく顔を溶かして見ている。若くて顔も可愛いし、気も利く。男たちの顔が緩むのも仕方がない。
その光景から少し離れたところで、目にも見えぬ速さでキーボードを叩く女性がいた。彼女はゆりと男性社員の会話を聞き、一瞬手を止めた。
(それ……やったの私なんですけど……)
と、言いそうになるのを呑み込んだ。
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