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ゆりは一人さめざめと泣いていた。
まさかの展開に、美緒はただ唖然として何も答えられなかった。完全に立場が逆ではないか。
(どうしてそっちが泣くの? 泣きたいのはこっちなのに……)
ゆりが泣き出したことに周りが気付き、なんだなんだと騒ぎになってくる。
「すみませ……私……」
「江本さんどうしたの?」
「私……大川さんと仲良くなりたくて、話しかけたんですけど……迷惑だったみたいで、ほんと……空気読めなくて、すみません……」
ゆりの発言に、自然と周りの視線が美緒に集まってくる。焦った美緒は弁解しようと口を開いたが、それより先にゆりが走ってその場から離れてしまう。
「江本さん!」
ゆりを追って、同僚も美緒の周りからいなくなってしまう。弁解するタイミングを失くし、美緒はただ一人、何もできずに呆然としている。
少し離れたところから、同僚たちが美緒を冷ややかな目で見ていた。
……どうしよう。
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