大川美緒の心の中

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 追って事情を説明すればいい? 謝るべきなのだろうか。でも、上手く伝えられるだろうか。美緒が滝沢に二股掛けられていたことを知られることにもなる。全部言ってしまっていいのだろうか。    混乱し何も動けない。  固まっている美緒の背中に、誰かの声が届く。 「大川さんってさー……クールって思ってたけど、なんか冷たいよね」  ポツリと言われたその言葉が、美緒の心を突き刺した。 「私たちとは違うって思ってるんでしょ」 「一人が好きなんだろうね」  周りの視線を痛いほどに感じる。  心臓がバクバクと音を立てて、美緒は息苦しさを覚えた。この視線には覚えがあった。 ーー高校の頃、私があの子に反論したときのクラスの視線だ。  そうわかった途端、声が出なくなる。心臓がギュッと痛くてかなわない。  その日から、周りの美緒への評価は一気に変わってしまうことになる。  元々仲がいい人がいるわけでもなかったが、今の状況は以前とまるで違うことに、美緒は気づいていた。  同僚たちが明らかに美緒を白い目で見るようになったからだ。どうやら、『明るく気遣いが出来る後輩を泣かせた冷たい人』という噂が流れ、イメージが定着してしまったらしい。
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