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仕事だけは頑張ろう、と意気込んでいた美緒は、会社にも行きづらくなってしまう。ただ友達が出来ないのと、周りから疎まれているのでは状況が違いすぎる。
いっそ、会社を辞めて一からやり直そうか。元カレの滝沢や、今付き合ってるゆりがそばにいるのも辛いし……。
そう思い悩む美緒を、ゆりは遠くからどこか嬉しそうに眺めていた。
数日後、美緒は相変わらず仕事を黙々とこなしていた。
辞めたいと悩んでいても、そうすぐに決断はできない。転職情報を調べつつ、とりあえず今は目の前の仕事をやるしかない。そう心に決めて、周りからの視線に耐えながら仕事に勤しんでいる。
ちなみにあんな事件を起こしたゆりは、いまだに人気がないときに美緒に仕事を任せてくるので、その神経の図太さに美緒は感心するぐらいだった。もし断ると、次はどんな騒ぎを起こされるかわからないので、美緒は何も言わずゆりの仕事を手伝っている。これ以上もめ事が起こるより、手柄を取られる方がずっとマシだ。おかげで残業続きだが。
今日は残業せずに早く帰りたい……そんな思いを抱きながら手元にだけ集中している美緒の耳に、近くの同僚の声が入ってくる。
「ねえ、今日から来る新しい部長って、本社から異動してきた人らしいよ」
「あ、聞いたー! なんか若いけど凄く仕事が出来る人らしくて、出世間違いなしって言われてるって」
「えーどんな人なんだろー。厳しくないといいなあ」
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