大川美緒の心の中

23/27
前へ
/242ページ
次へ
 仕事だけは頑張ろう、と意気込んでいた美緒は、会社にも行きづらくなってしまう。ただ友達が出来ないのと、周りから疎まれているのでは状況が違いすぎる。  いっそ、会社を辞めて一からやり直そうか。元カレの滝沢や、今付き合ってるゆりがそばにいるのも辛いし……。  そう思い悩む美緒を、ゆりは遠くからどこか嬉しそうに眺めていた。  数日後、美緒は相変わらず仕事を黙々とこなしていた。  辞めたいと悩んでいても、そうすぐに決断はできない。転職情報を調べつつ、とりあえず今は目の前の仕事をやるしかない。そう心に決めて、周りからの視線に耐えながら仕事に勤しんでいる。  ちなみにあんな事件を起こしたゆりは、いまだに人気がないときに美緒に仕事を任せてくるので、その神経の図太さに美緒は感心するぐらいだった。もし断ると、次はどんな騒ぎを起こされるかわからないので、美緒は何も言わずゆりの仕事を手伝っている。これ以上もめ事が起こるより、手柄を取られる方がずっとマシだ。おかげで残業続きだが。  今日は残業せずに早く帰りたい……そんな思いを抱きながら手元にだけ集中している美緒の耳に、近くの同僚の声が入ってくる。 「ねえ、今日から来る新しい部長って、本社から異動してきた人らしいよ」 「あ、聞いたー! なんか若いけど凄く仕事が出来る人らしくて、出世間違いなしって言われてるって」 「えーどんな人なんだろー。厳しくないといいなあ」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6690人が本棚に入れています
本棚に追加