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ただ、彼女も昔からこうなわけではなかった。少なくとも学生時代までは、友達もいたしもっと普通に話せていた。
美緒には思い出したくない、苦い思い出がある。
高校三年生の時、仲良くしていた友達は物静かな子だった。それでも話すと楽しいし気が合うので美緒は一番の友達と思っていたが、その子はよく掃除や委員会を押し付けられていた。
よく言うキラキラしたカースト上位女子。派手で目立ち、自然とクラスの中心部にいるグループの子で、美緒の友達をよく利用しているのを目撃した。友達は苦笑いしながら、『私は大丈夫だよ』と言うだけ。
『この子に任せてばっかりじゃなくて、自分でちゃんとやった方がいいと思う。あなたの仕事でしょ?』
ある日美緒は、ついそう言ってしまった。何度も繰り返し利用される友達を、それ以上見ていられなかったからだ。
教室中がシン、と沈黙を流した。相手はすぐに表情を変えた。
『えーそんな言い方ないんじゃない? 大川さんこわー』
そう鼻で笑った相手の目の奥は、明らかに怒りで満ちていた。
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