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(私は確かに誘われてないし……一発芸も出来ないし……)
一つため息をついて、美緒は受け取った。
「わかりました」
ああ、また受け取っちゃった。同じことを繰り返すだけって、分かってるのに。
美緒は心の中で自分を殴りつける。毎回これだ、心の中の自分はもう瀕死状態。
「お願いしまーす」
ゆりはそう心のこもっていないセリフを置いていくと、カバンを持って出て行ってしまう。廊下で待っていた数人の同僚に笑顔で駆け寄った。
「あ、江本さんいたいた! 行ける?」
「はーい、行きましょ!」
ゆりは数人の同僚に囲まれて歩き出す。ちらりと遠目で美緒のことを見て微笑む。飲み会にも誘われず、一人で残業なんてかわいそ。
「江本さん何してたの?」
「え? あ、えっとー大川さんが残業するみたいなんで、何か手伝えませんかって聞いてたんです!」
とんでもない嘘を平然とつくゆりを、周りは感心して見た。
「やさしーい。さすが江本さんだね。でも大川さんは、全部一人でできちゃうからね」
「そうそう。凄く仕事できるよねー」
「大川さん一人で三人分の仕事してそう」
「まじそれ」
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