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日が落ち始めると、私はカフェの入口のランプに明かりを灯した。
朝の景色も素晴らしいけど、やっぱり空を見上げると一面星々が輝いて見える夜の景色は、言葉で言い表せない美しさだ。
そして、日が完全に落ちて太陽が月とバトンタッチをすると、この時間の常連さんがやって来る。
カランカラン、カランカラン。
「こんばんは〜!」
「いらっしゃいませ。風野さん、今日も涼太くんと一緒にありがとうございます。」
「涼太はここのホットミルクを飲まないと寝れないって言うからね。」
「フフフ、涼太くんこんばんは。」
「こ、こんばんは。」
涼太くんはいつも照れくさそうに挨拶してくれる。
「風野さんは日替わりパスタでよろしいですか?」
「えぇ、私は冷たいビールと行きたいところですけど、これからまだ走らないといけないので、雅ちゃん特製のハーブティーお願いします。」
「飲酒運転はまずいですものね。ハーブティーは今日はカモミールです。パスタはトマトのスープパスタです。」
「美味しそうですね。楽しみだ。」
2人はテーブル席に座った。私はキッチンでカウンター越しに会話を楽しみながら調理するのが好きだ。何だか、その人の為に気持ちを込めて作れる気がするから。
「涼太くんは暗いのはもう慣れた?」
「うん、お父さんが手を繋いでくれるから。」
「優しいお父さんだよね。」
「うん、僕お父さん大好き。」
私がチラッと風野さんを見ると嬉しそうに微笑んでいた。その顔を見ると私まで嬉しくなる。ずっとずっと仲の良い親子でいて欲しい、私はその思いを込めて完成した料理をテーブルに運んだ。
「お待たせしました。パスタは涼太くんも食べれるようにお取り皿使ってくださいね。涼太くんは、ホットミルクは熱いから気を付けて飲んでね。」
「いつもありがとうございます。いただきます。」
「いただきまぁす!」
私はカウンター内に戻り、洗い物をしながらほのぼのと会話をしながら食べる2人のことを見守っていた。
「涼太もあと1年くらいしたら、1人で行けるようにならないとな。お姉ちゃんもその年くらいに1人立ちしたからな。」
「1人は寂しいよ。」
「お父さんもお母さんもお姉ちゃんも、この山の中にはいるよ。時間になったら戻ってくればいいんだから。さぁ、ホットミルク飲み終わったら行くよ。」
不安そうな表情をしながらホットミルクを飲む涼太くんを、風野さんは父親として優しい目で見つめていた。その様子を見ているだけで、私も心が温まる気がした。
「ご馳走さまでした。涼太、美味しかったな。」
「うん!お姉ちゃん、ご、ご馳走さまでした。」
「はい、お粗末さま。これからまだ走るんですか?」
「えぇ、私たちを待っているこの山に住む動物たちもいますから。」
「お気をつけて。」
風野さんと涼太くんはカフェから出ると、夜風となってあっという間に消えていった。
「いってらっしゃーい!」
私は大きく手を振った。
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