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3.奥の手とは、最後に出すから意味がある。
「そんな勝手な主張が罷り通るとでも?」
グレイは投げられた髪の束を拾わず、睨んだまま嘲笑を返す。
「何が目的だ」
誓約と盟約で縛られた境界線。
それは、簡単に覆せるものではなく、あちら側の住人をこんな黒魔術ごっこで呼び出せるはずがない。
向こう側とこちら側の欲求が合致し、世界を渡るに見合うだけの対価を支払わない限りは。
つまり、コイツはこの馬鹿げた呼びかけに応じ、境界線を自らの意思で越えてきたことになる。そう結論付けたグレイは、
「このまま人殺しの害獣をのさばらせては、俺の仕事が増えるだろうが」
大人しく死んどけ、と容赦なく銃弾をパトリシアに打ち込んだ。
放たれた弾丸は間違いなく全弾パトリシアに命中した。
「あらまぁ。酷い言いがかりですわね、神父さま。私が手を下そうが下すまいが、どのみち彼らは生きてここから出られませんでしたわ」
だって、あなたは彼らを殺しに来たのでしょう? と笑みを絶やさないパトリシアの手から弾丸が落ち、カランカランと床にぶつかり音を立てる。
「ふふっ。今時は自動拳銃が主流だと聞き齧っていたのですが、神父さまはリボルバー派なのですね」
結構痛かったですよと余裕のパトリシア。
「……バケモノか」
装填し直したグレイは一気に間合いを詰め、拳銃を乱射する。
「まぁ、レディに向かって失礼ですわね!」
憤慨したようにそういったパトリシアは、到底人間とは思えない速度でひらりと攻撃を交わし、
「お戯れもほどほどになさいませ、神父さま。人間の肉体は脆いのですよ?」
この遺体に用があったのではないのですか? とクスクスと笑う。
人外の生き物を相手にしばらく攻防した後、グレイの動きが止まる。
「ッチ」
「ああ、弾切れですね。神父さま」
ひらりとワルツでも踊るかのような軽やかな足取りでグレイに近づいて来たパトリシアは、
「ふふ、準備運動にはちょうどよい時間でしたわ」
ガッとグレイの首を掴むととても女性とは思えないほどの力でグレイの身体を持ち上げた。
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