一章 雪の中の再会

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すべてを失った私に唯一残ったものは、何物にも代えがたいかけがえのない愛する人。 その事実だけで生きていけると思った。 『はい。なにもない私だけど、旺志さんのお嫁さんにしてください』 『ああ。覚えておいて、真白。俺は、真白がなにも持ってなくても真白がいい。優しくて少し意地っ張りで……でも、素直で真っ直ぐでよく笑う真白を、愛してるんだ』 偽りの答えを紡いだ私に、旺志さんは嘘偽りのない真っ直ぐな愛をくれた。 この思い出を抱えて、彼のいない日々を生きていこう。 『旺志さん、抱いて……』 ひとり密かに決めた私は、旺志さんに縋るように抱きついた。 彼は、私に優しいキスをしてベッドに連れ込み、何度も愛を唱えながら触れた。 甘く優しく、そして次第に激しく。 私の肌をたどる旺志さんの唇や指先の感触を、一生忘れたくないと思った。 全部全部記憶に刻んで、彼との思い出を心に閉じ込めようと思った。 最後の夜は、どうしようもないほどに甘くて切なかった――。
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