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すべてを失った私に唯一残ったものは、何物にも代えがたいかけがえのない愛する人。
その事実だけで生きていけると思った。
『はい。なにもない私だけど、旺志さんのお嫁さんにしてください』
『ああ。覚えておいて、真白。俺は、真白がなにも持ってなくても真白がいい。優しくて少し意地っ張りで……でも、素直で真っ直ぐでよく笑う真白を、愛してるんだ』
偽りの答えを紡いだ私に、旺志さんは嘘偽りのない真っ直ぐな愛をくれた。
この思い出を抱えて、彼のいない日々を生きていこう。
『旺志さん、抱いて……』
ひとり密かに決めた私は、旺志さんに縋るように抱きついた。
彼は、私に優しいキスをしてベッドに連れ込み、何度も愛を唱えながら触れた。
甘く優しく、そして次第に激しく。
私の肌をたどる旺志さんの唇や指先の感触を、一生忘れたくないと思った。
全部全部記憶に刻んで、彼との思い出を心に閉じ込めようと思った。
最後の夜は、どうしようもないほどに甘くて切なかった――。
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