一章 雪の中の再会

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「ユキちゃん? どうかした?」 お客様の声でハッとした私は、すぐに笑顔を繕ってお酒を作った。 蓉子ママに大きな恩があるというのに、ぼんやりしているわけにはいかない。 「そういえば、ユキちゃんは東京出身だったよね。今度、東京出張があるんだけど、なにかお土産買ってこようか?」 東京と聞いて、胸の奥が小さく痛み出す。 「ありがとうございます。でも、お気持ちだけで充分です」 「ユキちゃんは欲がないなぁ」 「じゃあ、甘えてもいいですか? いっぱいお願いしちゃいますよ?」 疼く胸を隠すように明るく笑ったのに、蘇ってくるのは旺志さんと過ごした最後の夜のこと。 あのときの彼との情事は、あまりにも甘くて優しすぎた。 夜明け前、まだ眠る旺志さんの唇にキスを残して羽田空港へと向かい、最短で乗れる便を取ったことが、まるで昨日のことのようにすら思えてくる。 飛行機から見た朝日がやけに眩しくて、ふっと気が緩んで……。その瞬間、零れた涙が止まらなくなり、私は人目も憚らずに新千歳空港に着くまで泣き続けた。 
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