プロローグ

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今の私は、三つ揃えの上質なスーツを纏う旺志さんに見劣りしない装いになっている。 ドレスから小物に至るまですべて彼が選んでくれ、私好みの可愛さと美しさが同居したスタイルが完成したのだ。 ここのコース料理も『大切な記念日だから』と、特別に用意してもらったみたい。 旺志さんが考えてくれたデートプランは予想外のものばかりで、戸惑いを抱えながらも浮かれていた。 ところが、彼のプランにはまだ続きがあった。 エグゼクティブスイートルームに誘われ、今夜はここに泊まるのだと言う。 窓から一望できる東京都の煌びやかな夜景を前にしたときは、あまりの幸福感で少しだけ怖くなった。 「こんなに幸せだと、もう幸せを使い果たしちゃったかも」 冗談めかしながらも不安を零せば、旺志さんが優しい笑みを浮かべる。 「そんなことない。真白の幸せはまだまだこれからだ。だって、真白のことは俺が幸せにすると決めてるからな」 なんて傲慢な言葉だろう……なんて思えないのは、彼がすべてを持っている人だから。 出生、地位、名誉に始まり、容姿に至るまで。神様はこの人にすべてを与えた。
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