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通りを歩く人からは、私たちの姿は見えないだろう。
もし目の前にいるのがよく知らない男性だったのなら、こんなところにふたりきりでいることに抵抗感と警戒心を抱いたに違いない。
そんなものを持たなかったのは、相手が旺志さんだからだ。
彼の怒りや憎しみに似た感情は、さっきからずっと伝わってくる。それなのに、私を傷つけるようなことをする人じゃないという確信がある。
身勝手なことをしておいて勝手な言い分だと思いながらも、旺志さんとふたりきりになっても怖くなくて、彼への信頼感がそうさせているのだとわかっていた。
「理由なんてないよ。旺志さんとはもう一緒にいられないと思っただけ」
「いかるが宝石が倒産したからか?」
「違う」
「誰かになにか言われたか?」
「違うよ」
「じゃあ、どうしてだ? なぜ俺の前から姿を消した? 俺たちは愛し合って……あの日、真白は確かに俺のプロポーズを受けてくれただろ?」
質問のたびに首を横に振っていた私は、旺志さんの表情に怒りや憎しみに混じってためらいがあることに気づき、胸の奥がズキズキと痛み出す。
けれど、ここですべてを打ち明けてしまったら、あのとき彼を傷つけた意味がなくなる。
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