二章 君を手放す気はない

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許されないことをした私にできるのは、ただ旺志さんに憎まれることだけ。 最後の最後まで、彼に憎まれ続けるしかないのだ。 「愛なんて、旺志さんが一番信じてなかったものでしょう?」 だから、私はまた旺志さんを傷つけなければいけない。 罪悪感と苦しみを押しのけて、微かな笑みを浮かべた。 「いつだったか、旺志さんは言ってたよね? 『正直、恋愛で本気になったことはなかった。真白と出会って初めて、ずっと一緒にいたいという気持ちを知った。これまでの俺は、愛なんて不確かなものをなによりも信じていなかった』って」 一言一句しっかりと再現できたのは、このあとに彼が言ってくれた言葉が嬉しかったから。 「ああ、そうだ。だが、こうも言ったはずだ。『真白と出会って、人を愛することを知った。真白が俺にそれを教えてくれた。だから、ずっと一緒にいたい』と」 そして、旺志さんも私と同じように完璧に自分の言葉を再現した。 「そんなこと、覚えてたんだね……」 「忘れるわけがないだろ。俺は真白のことが大事で仕方がなかったんだ。真白とのことなら、どんなことでも覚えてる」 記憶力のいい彼のことだ。それはきっと、嘘じゃないだろう。
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