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一章 雪の中の再会
北海道の片隅にある街は、今日も賑わっているのにどこか静かだった。
十一月下旬にはすでに雪が積もっているなんて、去年の今頃までは知らなかった。
半月ほど前に初雪を観測して以来、今夜もしんしんと降る雪はこの街なんて呑み込んでしまいそう。
喧騒の中にいるのに、雪を見ている静寂に包まれる気がするから不思議だ。
一年前はまだこの街に来たばかりで、右も左もわからなかった。あてもなく彷徨っていた私は、十一月の雪に埋もれてしまいそうだった。
北海道で迎える二度目の冬は、昨年よりも少しは平気だろうか。
今夜も胸の奥の痛みを押し込めながら地面を踏みしめれば、頼りなさげな足跡が増えていった。
「ユキちゃん、今日もバイト先から直接来たの?」
今の職場――『芙蓉』に着くと、蓉子ママが「お疲れ様」と微笑んだ。
「はい。すぐに支度しますので」
「その前にこれ食べなさい。どうせちゃんと食べてないだろうから」
カウンター席に置かれたのは、小さなおにぎりがふたつ。ママは「具は鮭をほぐしたものよ」と、温かいお茶の入った湯のみを置く。
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