第1章 天才軍師・山本勘助

1/1
前へ
/6ページ
次へ

第1章 天才軍師・山本勘助

西暦1561年09月09日。 ここは武田信玄が川中島の戦いの本拠地にするため新しく建てた城。海津城 山本勘助「上杉謙信と睨み合いをしていても…仕方ありませぬ…。何か風穴を開けるくらいの派手な作戦が必要だと私は思いますが…」 武田信玄に仕える家臣達が黙ったまま 海津城の広間で座っていると…口火を切ったのは天才軍師・山本勘助。 山本勘助(やまもとかんすけ)…左目を怪我しており妻の形見である眼帯を目につけている。寡黙な力持ちだが作戦を考えるのは何より得意。しかし…自身の考えを人に伝えるのは苦手。 飯富源四郎「お言葉を返すようですが…風穴を開けるくらいの派手な作戦とは如何なる作戦にございますか?」 飯富源四郎(おぶげんしろう)…後の山県昌景だが今は年齢の離れた異母兄の後ろを追い掛けていた影の薄い存在に過ぎない。 山本勘助「名付けて啄木鳥戦法。」 山本勘助はエヘンと胸を張りながら 自身が名付けた作戦について話そうとはしましたが… 甘利信忠「…相手は軍神・上杉謙信ですぞ。生半可な作戦では武田が滅亡する可能性も高くなるかも知れぬ…。それを理解しておるのか?と我が父が生きていたならそう言うでしょうな。」 甘利信忠(あまりのぶただ)…甘利虎泰の息子で若くして武田の忠臣として活躍してはいるがまだ21歳である。 山本勘助「まだ御身は21歳であられますから今は亡き父上の名前ばかりお出しにならずに経験を積まれては?」 山本勘助に指摘された甘利信忠は、 耳まで真っ赤にしながら… 甘利信忠「そんな事、貴方に言われずとも分かっておる!」 今にも泣き出しそうな顔をしながら 山本勘助に噛みつこうとしている甘利信忠を慰めるのは… 飯富源四郎「信忠殿、落ち着かれよ。 山本勘助殿もどうしてそんなに若者を口撃なさるのでしょうか?」 武田信玄「今は内輪もめをしている場合ではないであろう…。とりあえず啄木鳥戦法とやらの説明を聞こうではないか?」 板垣信方、甘利虎泰を西暦1548年に相次いで喪っている武田家の家臣達は、年齢的にはそれなりに若返っていたのでなかなか一枚岩になるのは厳しいようで… 山本勘助「上杉謙信の率いる軍勢がいるのが妻女山ではこちらの手の内がバレてしまいまする…。」 海津城の向かいにあるのが、 妻女山とは申せ山と平地にある城では 武田軍の動きは筒抜けでした。 武田信玄「私の考えた作戦の(ほころ)びを探しそこを突くのが謙信…。つまり…綻びがないようにして貰わなければ困るのよ…勘助。」 山本勘助「上杉謙信の率いる軍勢は、 1万3千ですから我が軍は別働隊と本隊に分けて二手から上杉を叩きます。」 飯富源四郎率いる別働隊は、 1万2千の軍勢で妻女山の裏手から山を登り上杉勢を八幡原にまでおびき寄せ…そこで待ち構えるのは武田信玄が率いる本隊、8千。 つまり… 二手で一気に上杉を叩く作戦でした。 すると… 武田信繁「8千の軍勢が八幡原で待ち伏せをするのは構わないが裏を掻かれる可能性はないのか?」 武田信繁(たけだのぶしげ)…武田信玄の同母弟ではあるものの両親からは溺愛されていたが決して偉そうにはせず兄に対しても礼儀正しく振る舞う。 武田信廉「兄者、お館様は俺達で守ろう。母を同じくする俺達の絆ならば必ずや守りきれるさ。」 武田信廉(たけだのぶかど)…武田信繁、武田信玄とは母を同じくする弟で3兄弟は顔がそっくりなため暗闇などでは甘利虎泰や板垣信方でさえ間違えてしまうくらいそっくりだった。 武田信繁「…当たり前だ…。 何があろうとも…兄上は守る。」 武田信玄「鬼気迫るような顔で言われると何とも恐いのだが…兄より先に逝くなど許さないからね…」 武田信玄、信繁、信廉仲良し3兄弟を待ち構えるのは残酷過ぎる運命でしたがまだ誰もそれには気づいていませんでした。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加