第4章 お館様を死守せよ!

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第4章 お館様を死守せよ!

甘利信忠が八幡原でバラバラになりかけていたものの絆を取り戻した異母兄弟を守ろうと盾になっている頃、 武田信玄「これは厳しいね…。 軍神と軍神の姉が本陣に乗り込んでくるなんて…!」 綾御前「武田信玄、命は貰うわ!」 上杉謙信の隣で馬に乗りながら 強気な言葉を口にしている綾御前は、 上杉謙信「姉上、 それは何でしょうか?」 何故か泥を丸めて作ったような団子を握りしめておりました。 綾御前「昨日は殿の誕生日で殿が大好きなきび団子を作ったら…こんな形になってしまったのよ?信玄、食べる?遠慮しなくて良いのよ…?」 武田信玄「腹痛を起こしそうなので遠慮しておくよ。どうしてきび団子が泥団子みたいになるのかが分からないのだけれど…」 上杉謙信は姉の手料理を食べさせられ着物を千切りにされる政景の事が極めて気の毒に感じていました。 上杉謙信「姉上、戦に出るよりも料理や洗濯の修行をするべきでは…?」 武田信玄「うん、それは私も思うよ。」 武田信玄が上杉謙信と綾御前の会話に聞き入っているまさにその頃、 本庄実乃「武田信玄、覚悟せよ!」 武田信玄の背中側から突っ込んで来たのは本庄実乃(ほんじょうさねより)でございました。 すると… 武田信繁「兄上…無事ですか?」 武田信玄の代わりに負傷したのは、 武田信玄「信繁!どうして兄を庇い、負傷するような事をするのだ?」 武田信玄の同母弟である武田信繁。 武田信繁「お館様は死守せねばなりませぬ…全ては武田の為になります。」 武田信繁はその傷が元で… 命を落としてしまいました。 武田信玄「愚か者、兄より先に逝くなとあれ程言ったと言うのに…」 武田信玄には泣く程の暇はなく… 本庄実乃「次こそ命を奪ってやる!」 武田信玄「死ぬ訳にはいかないね… 信繁に生かされたこの命を守り抜かねば…ならないからね…!」 本庄実乃の攻撃を次に受けたのは… 山本勘助「ぐっ…、お館様、 御無事でございますか?」 武田信玄がその才能を愛し頼りにしていた軍師の山本勘助でした。 武田信玄「勘助!死んで花実が咲くものか…!死ぬ事など私は許さない!」 山本勘助「妻の元へ逝くだけです。 妻は…光里(ひかり)は生まれつき目が見えなかったのですがこの眼帯を付け笑顔を浮かべながら生きていました。そんな妻を近くに感じたくて私は目が見えるのに眼帯をしていました。そんな私の愛を…お館様だけが否定しませんでした。そんなお館様を守って命を落とすならば…本望です。」 こうして山本勘助も命を落とし、 武田信玄は檄を飛ばしました。 武田信玄「これ以上の死者を出す事だけは許さないからね…!皆、死ぬ気で生きなければ…私は許さないよ!」 父である武田信玄の檄を聞いた武田義信は異母弟である諏訪勝頼を自らの背中で隠すように敵将・本庄繁長の前に立ちはだかりました。 武田義信「…勝頼、下がれ!」 すると… 諏訪勝頼は意固地になっているのか 異母兄の背中で守られながらも… 力一杯自らの思いを口にしました。 諏訪勝頼「下がりませぬ!俺は、武田信玄の息子です。異母兄上に守られてばかりでは重臣達の信頼を得られませぬ!」 そんな諏訪勝頼の思いを聞いた本庄繁長がまたもや異母兄弟を討ち果たそうとしましたが… 本庄繁長「…では仲良く討ち果たそうか?」 その刃を自らの刃で受け止めたのが、 甘利信忠「させぬ!武田軍でこれ以上の死者を出す事だけは許されぬ!皆で生きなければならぬ!」 甘利虎泰を父に持つ甘利信忠でした。 本庄繁長「君も意外に根性あるんだね?さすがは最強猛者・武田軍か…」 本庄繁長が関心していると… 武田信廉「兄者!お待たせした! 別働隊、ただいま到着にござる!」 飯富源四郎らを呼びに行っていた 武田信廉が本陣目指して戻りました。 武田信玄「信廉!待っていたよ! 私を庇って…信繁が命を落とした!」 武田信廉「なんと!兄上が…! では兄上の仇を討つとしましょう!」 仲良し3兄弟の真ん中である信繁を喪い怒り狂う信廉ではありましたが… 上杉謙信「仕方あるまい!こうなると上杉軍の不利となるので皆、退散する!帰って春日山城で美酒を呑むとするか!」 さすがは軍神たる上杉謙信。 引き際を悟ったようで春日山城目指して帰って行きました。 しかし… 綾御前「私は帰りませんよ!殿が謝るまで私は帰りませんからね!」 綾御前だけは夫である長尾政景の顔を見たくないようで駄々っ子のように駄々をこねておりました。 上杉謙信「…帰りたくないなら仕方ないので暫く春日山城にいて下さい。」 綾御前「…なら、帰ります。」 武田信玄「しかし…越後の龍を困らせるとはあの姉もなかなかの強者(つわもの)かも知れぬ…」 武田信玄が上杉謙信を困らせる姉に驚愕していると… 武田義信「父上、困った異母弟ではありますが…守り抜きましたよ…」 諏訪勝頼「異母兄上に守られてばかりなど俺は…嫌です。」   武田信玄「私の軍略は生きる事。 死ぬ事だけは…許さないから…ね。 義信は兄として弟を守りたいだけだよ…私も弟を守りたかった…」 武田信廉「…生きる事は実に難しい。だけど…生きる事で開ける道もある。だから…生きる事は最高の軍略。」
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