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「あらあ、わんわん。どうしたの」
僕をみてご飯をくれる人は多かった。僕が尻尾を振って駆け寄るからだ。ご飯をくれるのはもちろん、頭を撫でて家に入れてくれようとするんだけど。
ごめんね。僕は帰りたい場所がある。僕が行きたいのは、生きたいのはここじゃないんだ。
「あ、待って」
ごめんおばあちゃん、ご飯だけ食べて逃げてごめんね。でも僕は帰るんだ! きっとパパは夜も探し回ってる、ママは泣いてるかもしれない。ううん、絶対泣いてる。
いててて。まったく、ひどい奴がいるもんだ。ご飯欲しくて駆け寄っただけなのに、いきなり蹴っ飛ばすんだもんな。おかげでお腹が痛いし足も痛い。ずっと走って疲れてるのに。
噛みつかなかったのはママに怒られたくないからだぞ、お前なんかに僕は負けないんだから。ふん。
何日か公園で一休みしていた。ここにいると食べ物もらえるんだ。そうしたら真っ暗な中でライトが見える、僕を探しているみたいだ。
「おいで、大丈夫だから」
そう言ってソーセージを近づけてくるけど、右手にはヒモを持っていた。僕は頭がいいんだよ、それで僕をつかまえるつもりでしょう。騙されないぞ!
「警戒しちゃいましたね」
「人懐っこい子だって聞いてんだけど。リードみて怖がっちゃったか。檻を設置して様子見しよう」
「どうですか、保護できそうですか」
「怖がらせてしまって隠れちゃいました。マイクロチップがあれば助かるんですけどね」
「よろしくお願いしますね。ウチの市に保護活動の人がいて本当に助かりました。給食をこっそり持ち帰る子が複数いるので何かと思ったら、あの子にあげていたので」
「お優しい先生で安心しました。保健所に連絡する人もいますからね。我々にお任せください」
「私も犬を飼ってますから。もし引き取り手がいなければ家族と相談はしますが、私が引き取ることも考えています」
何話してるのかよくわからないけど。最近僕にご飯をくれてた子供たちを知ってる人なのかも。怪しいから僕をつかまえにきちゃったのか。みんなと離れるのは寂しいけど、早くいかなきゃ。ここは危ない。
歩いても歩いてもパパとママはいない。悲しくて苦しくて挫けそうになる。
そんな時思い出すのはやっぱりパパとママだ。僕はパパとママとおうちとおもちゃと散歩。これしか知らないから。
僕がテンションあがって騒ぐとパパも一緒に大騒ぎしてくれる。ママも僕を追いかけてくれる。帰りたい、早く会いたい。
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