ピースが帰る時

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 そうやって泥だらけになってガリガリに痩せちゃって、ふらふらしながら歩く。お腹空いた、くらくらする。もうだめだって思った事は何回もあった。  お腹が痛くて動けない事もあったし、足はパンパンに腫れてる。もう歩けないと思いながらも何度も立ち上がる、帰るんだ。パパとママの笑った顔が見たい。ぎゅってしてほしい。僕のお家はあそこなんだから!  トボトボと歩いてたけど僕はハッとした、ここは。この道は一回だけ、お散歩できたことがある! そこらじゅうの匂いを嗅いでうろうろ。あ、これ僕の匂い。それにママの匂い! そうだ、絶対にそう、帰って来たんだ!  僕は嬉しくなって最後の力を振り絞って走り出した。いつも通ってた道だ! 帰って来た、帰って来たんだ!  お家について門をくぐって庭に入る。するとパパとママの楽しそうな笑い声が聞こえた。よかった、泣いてないみたい。 「わんわん、わん!」  ん? 僕じゃない鳴き声がする。そっと家の中を見ると、小さな犬をパパとママが撫でながら遊んでいた。そこはいつも僕がパパたちに甘えているところ。これは、まさか。  僕に弟ができたんだ! 嬉しい、一人で寂しかったから! 僕が寂しくないように弟を連れてきてくれた! 「きゃんきゃん!」  僕はありったけの声で吠えた。パパ、ママ、ただいま!
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