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「え……?」
目を大きく見開いたパパ。びっくりしてる。まさか僕が自分で帰って来るとは思わなかったんだろうな。でも帰って来たよ! また抱っこして!
「なんでよ!? ちゃんと捨ててきたんでしょ!?」
ママが大声をあげる。そんな顔しないでママ、僕ちゃんと帰って来たから! 早くここを開けて! 痛い足を我慢して必死にジャンプする。
「袋の口縛って隣の県の山まで行ったんだぞ、ありえねえだろ!」
「いいから早く捕まえてよ! 隣のババアには病気で死んだって言ったんだから。見られたらどんな噂ばらまかれるか!」
パパとママが喧嘩してる。弟は急な大声にびっくりしてきゃんきゃん鳴きはじめちゃった!
「うるせえな、あの馬鹿犬と一緒で小型犬って何でこううるせえんだよ! 吠えないっつうから買ったのに、あのブリーダー許さねえからな!」
パパが勢いよく出てきた。僕はパパに駆け寄る。ただいま!
僕はキャリーにいれられた。うう、これお医者さん行く時に入れられるから好きじゃない。またチックンするのかな。またお尻に何か入れられるとか?
でも我慢だ、終わったらおやつをもらえるから。誰か来た、お医者さんかな。パパはその人に僕を渡した。
「お願いします」
「チップはなしか。犬を飼われているんですよね? 一応お聞きしますが、引き取る意思は」
「そういうのいいから早く持っていってくれます? 忙しいんですけど」
「……。そうですか」
僕は今狭い部屋に他の子と一緒にぎゅうぎゅうに押し込まれてる。また部屋だ、昔いたところを思い出す。
あ、でも。パパとママはこういうところから僕をお迎えしてくれた。また迎えに来てるれるんだ! 待ってるよ、僕。いい子で待ってるから!
ガー、と音がした。なんだろう、うるさいなあ。他の子も「いやだ!」「助けてえ!」と叫んでる。大丈夫だよ、もう少ししたらみんなもパパとママが迎えに来るから。
ビー、ビーと音がする。そして、僕の耳は確かに「プシュー」という音を聞いた。
パパ、ママ。早く迎えにきてくれないかなあ。
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