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それから三日経って、陸から電話があった。 『二人だけで話がしたい』 先日は全員が集まったから、大方の話は済んでいる。自分の身の振り方も迷っていたので、正直もう少し放っておいてほしかった。何よりも俺のことで、俺以上に心を痛めてる親友を見るのはキツかった。 陸なりに ケジメつけるつもりなのか 原因は俺にある。最後に出来ることはしてやらなきゃな。俺は自分のマンションに来るように伝えた。 コーヒーを淹れてるとチャイムが鳴った。ドアの外に陸が所在なげに立っていた。 「突っ立ってねえで入れよ」 無言でブーツを脱いで、陸は勝手知ったるリビングへ向かうと、ソファにどっかと腰を下ろした。頬が少しこけて無精髭が伸びている。胸がちくりと痛んだ。 「ひでえ顔だな」 カップをテーブルに置いて俺も向かい側に座った。 「うるせーよ。……喉は」 「相変わらずだ。良くも悪くもない」 「元々掠れてるしな」 「下町のジョンってか」 「自惚れんな。お前は名無し(ジョンドゥ)だ」 陸がようやく口元を緩めた。俺はほっとしてコーヒーに口をつけた。 「八年か」 出会ってから、陸とは誰よりも長く同じ時間を過ごしてきた。もちろん四人で年中顔を突き合わせていたけど、練習が終わると陸と俺は大抵どちらかの家に行き、夜遅くまで他愛もない話に花を咲かせた。好きなアーティストの音源を共有し、気に入ったフレーズを真似して即興で演奏したりもした。 『あんたたち、よく飽きないわね』 母親に呆れられてもどれだけ語り合っても、二人の話は尽きることはなかった。さすがにバイトを始めてからは夜更かしの頻度は減ったけど、これからもその時間はなくならないと思っていた。 「長かったような、あっという間のような。何か変な気分だ」 「……やっぱり無理なのか」 陸が絞り出すように尋ねた。 「プロとしては難しいだろうって。爆弾抱えた俺と心中することねえだろ」 陸はまた黙った。こんなに二人の間に沈黙が訪れることなんてなかった。妙な間にどちらも落ち着かない。
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