プロローグ

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プロローグ

最後に(はじ)いた弦の余韻が、小さなライブハウスの会場にまだ揺れていた。それに(かぶ)さるように繰り返されるアンコール。 歓声を全身に浴びて、脳細胞はスパークしている。メンバーの名前を呼ぶ声や、歌えと叫ぶ声が飛び交う。 興奮の渦は更なる熱を呼び、ここにいる全員を狂わせていた。俺がスタンドマイクに手をかけると、ひときわ声が上がった。 「お前ら、本気か」 咆哮が耳を(つんざ)く。 「準備できてんのか」 さっきよりも大きな熱狂が俺の中にも湧き上がる。 「仕方ねえ。行くぜ!」 俺の掛け声と共にドラムスティックが最初の一打を叩く。それだけで伝わる。これから始まる旋律が自分たちにとって何をもたらすのか。会場は拳を突き上げ、俺と陸はギターをかき鳴らした。時に競い合うように指を走らせ、時に手を繋ぐように音を重ねる。ベースの音が肌を震わせてくるのを感じて、俺はマイクに向かった。 今夜、俺たちの八年の軌跡が幕を閉じる――
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