浮気されて山に登る

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 妙に喉が渇いて目を覚ましたのは、深夜二時くらいだった。  隣のベッドを見ると誰もいない。 「佐倉さん?」  荷物はある。スマホも置いたままだ。トイレだろうか。いや、トイレの電気もついていない。  しばらく寝せずに待っていたけど、帰って来る気配はない。  嫌な胸騒ぎがして部屋を出る。  さらにホテルの外にも出て、借りたレンタカーの有無を確認する。 「無い……」  レンタカーを置いてあったはずの駐車場には何も無い。  どうして。佐倉さんどこに行ったの。荷物も持たないで。どうして。  探すにも、旅行先で地理感もなく探すあてもない。  どうしたら。警察に言う?でもちょっと出かけただけだったら大袈裟にするのも……。いや、荷物置いて遠くに行くはずも無いしすぐ帰ってくるはず。いや、帰ってくるよね?  私は動揺したまま辺りをウロウロし、三十分くらい辺りを探してから一旦ホテルに戻った。  すると、ホテルの駐車場に、レンタカーが戻って来ていたのだ。 「佐倉さん!!」  私はレンタカーに駆け寄る。  佐倉さんが車内でぼーっとしている。 「あ、葉月さん……」 「どこ行ってたの!?心配したよ!!」  私は、車からゆっくりと降りてきた佐倉さんに詰め寄った。  佐倉さんは泣きそうな顔でボソリと言った。 「山に、行ったの」 「……山?だって、こんな夜中に……」 「うん、夜だから自動車道のゲート閉まってたから帰ってきた」 「じゃなくて、何で一人でこんな時間に……」 「入山自殺ってどんなものかなって思って」  そんな物騒な言葉を発する佐倉さんの顔は泣きそうな顔だった。
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