Binary Star

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アヤの身体の回復を待って…店は二日間の店休日としていた。 2日の休みで完全に疲れは取れないだろうが、アヤはとにかく、仕事をしたかった。 時間を持て余していたアヤのスマートフォンが鳴った。 見た事も無い番号に、通話ボタンを押そうか?押すまいか?迷っていた。 「アヤ?電話鳴ってるでしょ?」ママの言葉に、知らない番号からだと、見せていた。 「イタズラ電話かね?貸してごらん。」ママがアヤに変わって通話ボタンを押した。 「はい。えぇ、アヤの携帯ですけど、今は休養してるので代わりに私が出ましたが?」 「…ママ…誰?」小声でママに尋ねる。 「えっ?それは本当なんですか?」ママの表情が次第に変わってきた。 不思議に思うアヤ。 「あぁ…それは、本人に聞いてみないと…。あの、変な雑誌社じゃ無いですよね?」 ママのその言葉で雑誌社だという事が分かった。 「…分かりました。本人に聞いてみて、お返事させて頂きます。えぇ、それでは…失礼致します。」 そう言って会話を終えた。 「…ねぇママ?なんの話だったの?」 アヤの言葉に溜息をついたママ。スマートフォンをアヤに返したママの表情が険しかった。 「まぁ、聞いた事はある雑誌社なんだけどね。その…。」 「…その、何?」 「…写真集…出してみないか?って…。」 「…写真集…。誰の?」 「誰のって…アヤ!アンタのよ!」 「…はぁ!?私の写真集!?無理無理無理!!そんなの無理に決まってるよ!仮に出したところで、売れるはず無いじゃない!」 「アヤ…アンタは本当に分かってない!雑誌社がこうやって連絡して来るって事は、それだけ需要があるって事でしょ?」 「需要もなにも…私は男なんだよ?見せ物パンダじゃ無いんだから。」 「詳細は本人にって…相手だって、アヤが男って事は当然、分かってる。分かってる上で、こうやって連絡してきてるのよ!」 「…もう、私は、こじんまりと楽しければ良いんだけどなぁ…。」 「まぁ、水着とかのグラビアじゃ無いんだろうからね。詳しい事は、自分で聞いてみなさい。話はそこからでしょ?」 アヤは着信履歴の番号…それを見つめていた。悩んだ末に、電話する事にした。 「あ、もしもし?先程、ご連絡頂いたアヤ…ですけど…。」 ママが言ってた…聞いた事のある雑誌社。アヤもうろ覚えだが、なんとなく…聞いた事があった雑誌社だった。 「…写真集って、まさか水着とかのグラビアじゃ無いですよね?」 雑誌社が言うには、普段のアヤ。働いている姿や日常の姿を写真集として、販売したいとのことだった。 「…そう言われましても、私は…その…男ですよ?ご存知かと、思われますが…。」 もちろん、相手は知っての事での依頼だった。 「…はぁ。では、スタイリストと相談して、また、ご連絡させて頂きますが、宜しいでしょうか?」 スタイリスト…もちろん、香織の事だった。 「…はい。ではまた、後程。はい。失礼致します。」 ママの溜息…その意味が分かったのか、アヤ自身も大きな溜息をついた。 「アヤ…アンタはどこまで、有名人になるんだろうね?」 そう言うママの顔はニヤッとしていた。 「なに?この大波に飲まれる様な感覚…。何もかもが、一緒に来てる。私は私をまだ、理解出来てない。」 「理解するもしないも、香織に連絡してみなさい。まぁ、あの子の事だから…飛んで来るだろうけどね。」 香織の性格を十分過ぎるほど、分かっていたママ。 アヤにも分かっていた。 「…絶対、飛んで来るよね?」アヤの心配そうな言葉に、ニヤリと笑い頷くママ。 仕方無く、香織に連絡する事にした。
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