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「悠真!!お前、その服…女物だろ!」
「そうだけど…。変?」
「どうして男なのに、女物の服着てるんだよ?オカマか?」
「…オカマ?違うよ。姉さんのお下がりなんだから。」
服は…服。そこに男物と女物がある。そんな概念なんて無かった。
オマケに『オカマ』呼ばわりされる。
悠真の心の葛藤との始まりだった。
ある程度、成人になって…考えてみたら…おかしな事ばかりだった。
小学4年の頃から中学2年初めまで、母親の生理用品を買いに行かされた事を思い出した。
生理用品が何か?も知らなかった。小学生男子・中学生男子が生理用品をレジに持って行く度に、店員に不思議な顔をされた事を思い出した。
中学生になっても、自分の服は…姉のお下がり。服を買いに行っても何故か…女物の売り場に行かされた。
それがおかしい事に気づいたのが…中学2年になったばかりの事。
制服のシャツのボタンを留めている時…
「あれ?…よく考えたら…逆だよな?」
それまで、普通に…何も考えずに留めていたボタンに違和感があった。
私服は、姉のお下がり。制服は男物。ボタンが逆なのに気づいたのが…その時だった。
履いていたズボン…それさえも、姉のスパッツを履かされていた。
それを見て、幾度となく笑われていたが、気にもしてなかった。が…それを機会に、恥ずかしさと怒り…そのどれもが入り混じった…言い様のない気持ちを抑えつけた。
「別に私の着ていた服を、アンタが着ててもおかしくないじゃん。」
「他人の言う事に、一々、聞いてたら何も着れないでしょ?」
姉と母親に言われた。
女系家族の悲しい現実。それを敢えて、否定して…周りの目を気にして、男物の服を着る様になった。
自分がおかしいのか?家族がおかしいのか?
悠真の中の葛藤とは裏腹に、姉はまた、お下がりを悠真に押し付けていた。
男女間の違い…それを初めて知ったその頃、小学生から中学生初めの頃に生理用品を何食わぬ顔をして買いに行った自分が情けなく思った。
それ以来、頼まれても買いに行く事はなかった。
そもそも…自分は…どっちなんだ?男の顔や身体をした心は女性なのか?
可愛いと思える女の子も居た。不思議とそんな可愛いと思える女の子に憧れていた事もあった。
性の不一致。
そんな5文字で片付けられる物なのだろうか?
悠真の心は…揺れ動いていた。
悠真の女物の服…嫌っていた筈の物を再び、好む様になったのは20代後半からだった。
特にジャージだ。男物の、いかにも"ジャージ"と言うのが気に入らなかった。
女性のジャージは裾がフレアになっている。それが悠真には新鮮に見えた。
華奢な身体つきもあって、敢えて、女性物の…裾がフレアになった物を選び履いていた。
ある種の憧れにも似た感情。周りに咎められても言い訳があった。
「こっちの方が…足が長く見える。」
色は…暗めを選んだのは、男としての僅かな抵抗だった。
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