お試し異世界転生で公爵令嬢になりラブラブいちゃいちゃドキドキしたい

2/7
前へ
/7ページ
次へ
 森の中間あたりか。向こうから物音がした。鎧をつけて騎士の格好だが、何者かが剣を振り回してアメーバーを切り崩していた。 「ロメオ! ここまで迎えにきてくださったのね」 「カレン! 大丈夫だったか」  ロメオはアメーバーを振り払い、かけよる。深い青色の目に、爽やか系の整った顔立ち。うん、私も惚れた。性格が顔にもあらわれている。  そうでしょ、とカレンの思い。なによりロメオとお喋りがしたい。 「小百合という背後霊のおかげで。魔女様にもお会いしましたわ」 「怖くはなかったか。俺がこの剣で成敗してあげよう」  頼もしい男性だ。 「良い人よ。お土産も貰ったし」  そうして、近くの木の枝から仮足を切って液汁を飲ませる。 「これは! ワインより旨い。カレンは料理上手になる」  なぜそうなるのか、男心は分からない。 「食える。リンゴみたいだ」  仮足の切れ端まで食べてしまう。豪快な咀嚼が頼もしく思えた。 「まあ、ほんとだわー」  カレンもおちょぼ口でかじると、ハンカチで口を拭く。やはり好きな男性の前では、上品さを演じるのだろう。  木の枝の兵隊も味方につけたから、出口までは楽しく歩いて行けた。ハグしたり手をつないだりしないのは物足りないが、視線を絡ませ合い、微笑む。 ~こういう純情な恋も良いね~ (はしたないと思われるから。でも、もうちょっとねー)  カレンとしてはロメオが積極的に迫るのを期待もしていた。 「待ち伏せか」  ロミオが前をうかがうようにする。幌馬車と十人の騎士が立っていた。 「王家の馬車だわ。きっとジュレアン王女よ」  カレンが話す間にも騎士たちが近づき、後ろに煌びやかな衣装のジュレアンが続く。 「カレン。通り抜けたと思うなよ。エブリスタンツ王国の勇者が相手だ」 「王家の人がすることですか。もう、敬語なんかつかってあげない」  公爵家と王家は親戚にあたり従姉妹でもある二人。2歳下のジュレアンが何かに対抗意識を持っている感じはする。 「じょうとうだ。ここで、ロメオと一緒にはさせないから。勇者シーモベ、やっちゃいなさい」  それが合図なのか、一人の騎士が剣を振り上げてロメオへ近づく。 「おれを公爵の嫡男と知ってのことか」  ロメオは応戦する。 「王女様の命令だ。容赦はしない」 がしゃっ、ぶつかる剣。  もう片手で相手の胸倉をつかんで押さえ倒そうと競う二人。 「やっちゃえ」  ほかの騎士も襲い掛かる。ここは私がカレンの身体を動かすときだろう。 「多勢とは卑怯なり」  カレンは剣を構えると後ろから「突き」で転ばせて行く。 「小手だ! 面だ! どうだ。まだ歯向かうか」  転がる騎士たち。 「おのれー。小娘が」  態勢を立て直してカレンを囲む。 「奥義、剣の舞。しかと見届けなさい」  カレンは大上段に構えて、腕を交差させる。どこから打ち込んできても応戦できるスタイルだ。よほど自信がないと、身体の前面を開いてみせない。  打ち込もうとする騎士へ、くるっと振り向く。それだけでびびったか後退する。  回転しながら、しゅっ、しゅっ。剣を振り下ろすカレン。騎士たちは戦意喪失したようだ。  ロメオはジュレアンへ近づき、宣言する。 「ジュレアン王女。目を覚まされよ。隣国の王子との婚約を受け入れられよ。俺の嫁になるのはカレンだ」 「会ったこともない方とは嫌じゃ。それに、がさつらしい噂も聞く」 「顔はごついが、いい男だぞ。俺は会ったことがある。おれが保障しよう」 「ロメオ様が申されるなら。いちど会ってはみたいものだ」 「公爵家で席を設けよう」  これで三角関系は解消したのだろうか。あとはロメオとカレンの甘い恋愛のはず。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加